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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第20章 呪いの侵食

「そうだよ、この祭りは俺が用意した。愉しんでくれてるか鬼王さま」

「殺せ」

 鬼は顔色ひとつ変えずに式鬼(シキ)へ命じた。

 命じられた式鬼は一瞬で姿を消して屋根の上に移動する。

 しかし、鋭い爪が青年を切り裂こうとした瞬間、大きな白蛇が二尾、式鬼の身体に巻き付いた。

「ぐっ…!?」

 式鬼が動けず膝をつく。白蛇はギリギリと彼を締め上げた。

「悪いね。いまの俺は最高に調子がいいんだ。鬼王さま──…あんたの屋敷で、美味い餌にありつけたんでね。アレは最高にイイ味だった」

「……」

「人界に送るのは惜しかったが、誓いをたてちまったから仕方ない。ホントなら俺の屋敷に持ち帰って……死ぬまで嬲って遊びたかった」

 大蛇(オロチ)の嘲笑と挑発に対し、鬼は無表情のまま答えない。

 彼は拘束していた呪いの個体を屋根に向かって投げつけた。

「おっと、危ない危な───っ」

 大蛇が軽やかに回避する。しかし

「──巫女の霊力を喰った程度で思いあがるな…痴れ者が」

 追撃の爪で大蛇の顔が真っ二つに割かれ、頭部が地面に落ちた。


 ボトッ....!


「ウ、ウエ」

 落ちた頭部を前に、気味悪がって後ずさるモノノ怪たち。血と鱗が地面に散らばった。

「ク……クク」

 ところが、鼻から下になった大蛇の顔が、気味の悪い笑みを浮かべた。

「生きてるぞォ…!?」

 モノノ怪たちの目の前で、切り口からヌルりと新たな大蛇が現れる。

 蛇が脱皮するように、青白い身体が再生したのだ。



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