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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第22章 輪廻

花街に集まるモノノ怪たちのざわめきが頂点に達した。
驚きに恐怖と畏怖が入り混じり、彼らは宙に浮く天狐の姿に圧倒される。
「天狐っ……だと……?」
壁に押さえつけられて巫女の姿を見れない大蛇(オロチ)も、周囲の声を聞いて耳を疑う。
「バカバカしい、天狐は天界にいるモノノ怪だ。それが何故っ…人間の巫女に化けていた……?──…まさ、か、待て」
信じようとしない大蛇だが、頭上に浮遊する天狐の気配に、どういうわけか彼は覚えがあった。
しかしそれこそ、ありえない。
「鬼界を追放された狐が今ごろになって戻るわけ…!」
大蛇は式鬼(シキ)の手を払いのけ、巫女の姿を目に入れた。
「──…!あいつは」
…そして確信する。
目の前で起きたこの現象は──まさに奇跡と呼ぶにふさわしかった。
しかし、動揺するモノノ怪たちを見下ろす巫女の目は、まだぼんやりと定まらないでいた。
そんな彼女は雑踏の輪の中に鬼の姿を見つけ……彼をじっと見つめた。
「……?」
「降りて来い」
鬼が彼女に命じる。
すると、彼女を包む光の泡がひとつひとつ離れていき、浮遊していた身体がゆっくりと降りてきた。

