この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
巫女は鬼の甘檻に囚われる
第23章 旅の夜


 ──…


 あれから季節が巡り、人界は春を迎えていた。

 都近くの里山では、桜がほころび、柔らかな風が新緑の香りを運ぶ。

 夕暮れの空は茜色に染まり、遠くの山々が紫に霞む。

 里の小道には、木賃宿(キチンヤド)の軒先に吊るされた提灯が、そよ風に揺れて温かな光を放っていた。

「こんばんは。ひと晩のお宿をお願いできますか?」

 小さな木賃宿の戸をくぐり、巫女が宿主に声をかけた。

 高い声が春の風のように柔らかく響く。

 白い小袖に緋袴の巫女服が、夕暮れの明かりに映え、艶やかな黒髪が肩に流れる。

 人間の姿をしている彼女だが、その清らかな気配は天狐(テンコ)としての神聖さをかすかに漂わせていた。

 彼女の声を聞き、奥から亭主が顔を出す。

「部屋はあいてますぜ。…おや、その格好は巫女さまかい?」

 亭主が顔を上げ、目を細める。

「ええ、そうです」

 夕暮れの明かりを背景にたたずむ巫女は、まるで絵巻物の乙女のように美しい。

 長い黒髪が風にそよぐたびに光を反射し、琥珀色の瞳が穏やかに輝く。


/200ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ