この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
巫女は鬼の甘檻に囚われる
第23章 旅の夜

「わかっている。これより二度と俺の前で奴の話はするな」
「そうします…っ」
(自分から話を始めたくせに……)
鬼の苛立ちをひしひしと感じつつ、勝手では?と思い、巫女はチラリと彼を見上げた。
「──…ッ」
そこで、至近距離でバチリと視線が合わさる。
黄金の瞳が火鉢の光に燃えるように輝くのを、間近に見た心が跳ね上がった。
……目をそらせない
「……ぁ」
「……不満か?」
鬼の顔がさらに近づく。
途端に巫女が縮こまり…顔を伏せるものだから、鬼は彼女の耳元で甘く囁いた。
「俺も自覚はしている……自身の行動思考、お前が絡むといつも支離滅裂であるとな」
鬼は本来敵を引き裂くための大きな手を、できうる限り優しく動かし、巫女のおとがいをすくう。
巫女も諦めたように、眉を寄せて白状した。
「それは……お互いさま……です」
「……」
「わたしもあなたに触れられると……っ、自分が自分では、なくなるようですから……」
身をよじる巫女が、恥じらいを隠せずそう言った。
彼女の琥珀色の瞳が情に揺らされる。
鬼はたまらずその唇を塞ぎ、深く長く口付けた。
....クチュ...チュ
「…ん……ふ………!」
巫女の小さな手が、鬼の衣をそっと掴み、部屋の静寂が二人の吐息に満たされた。
火鉢の炭がパチリと音を立て、春の夜の虫の声が…遠くから寄り添うように響いた。

