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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第23章 旅の夜

「わかっている。これより二度と俺の前で奴の話はするな」

「そうします…っ」

(自分から話を始めたくせに……)

 鬼の苛立ちをひしひしと感じつつ、勝手では?と思い、巫女はチラリと彼を見上げた。


「──…ッ」


 そこで、至近距離でバチリと視線が合わさる。

 黄金の瞳が火鉢の光に燃えるように輝くのを、間近に見た心が跳ね上がった。


 ……目をそらせない


「……ぁ」

「……不満か?」


 鬼の顔がさらに近づく。

 途端に巫女が縮こまり…顔を伏せるものだから、鬼は彼女の耳元で甘く囁いた。


「俺も自覚はしている……自身の行動思考、お前が絡むといつも支離滅裂であるとな」


 鬼は本来敵を引き裂くための大きな手を、できうる限り優しく動かし、巫女のおとがいをすくう。

 巫女も諦めたように、眉を寄せて白状した。



「それは……お互いさま……です」


「……」


「わたしもあなたに触れられると……っ、自分が自分では、なくなるようですから……」



 身をよじる巫女が、恥じらいを隠せずそう言った。

 彼女の琥珀色の瞳が情に揺らされる。

 鬼はたまらずその唇を塞ぎ、深く長く口付けた。


 ....クチュ...チュ



「…ん……ふ………!」


 巫女の小さな手が、鬼の衣をそっと掴み、部屋の静寂が二人の吐息に満たされた。

 火鉢の炭がパチリと音を立て、春の夜の虫の声が…遠くから寄り添うように響いた。





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