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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第7章 清めの水

「……何故、逃げた?」
鬼の声が、静寂を破って響く。黄金の瞳が彼女を見下ろし、どこか探るような光を宿していた。
巫女は一瞬、言葉を失った。
(鬼が、問いかけた……?)
それは意外なことで、少しだけ戸惑う。
「…何故、と、それをわたしに問うのですか?」
だが、すぐに胸の奥でくすぶる怒りが燃え上がった。
「いったい何がわからないのですか?何度も、何度も、わたしに酷い辱めを与えておいて、よくもっ……そのような事が聞けるというもの!」
震える声で吐き出すと、鬼は首を傾いで見せた。その無垢とも取れる仕草に、彼女の怒りはさらに増す。
「辱め?──…ああそうであるな。羞恥に震え…俺の手管(テクダ)で乱れ啼くお前の姿は、美しく、此方を煽(アオ)る」
「な……//」
「故にお前は極上だ。だから『逃げるな』と命じたのだ」
鬼の言葉は冷たく、しかしどこか真剣だった。
この男にとって、彼女を支配することは自然な行為であり、彼女の抵抗や苦しみは理解できたとて──自身の命令にそむくなどとは考えてもいなかったのか。
「あなたを祓いにきたわたしが!その命令に大人しく従うと思うのですか?」
「だがお前は敗れた。それでも歯向かうことに意味があるのか?鎖で繋がれる一生を望むのか」
巫女は唇を噛み、目を伏せた。
鎖で繋がれるなど、耐えられない。だが、このまま鬼の欲望に身を委ね続けることも、彼女の心を砕くだけだ。
(無駄なあがきをしているだけだと、馬鹿にしているのですね)
沈む気持ちで屋敷の天井を睨むように見ると
ふと、鬼が続けた言葉が耳に届く。

