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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第7章 清めの水

「無駄でもわたしは諦めません。あなたの支配を決して受け入れない」

 震える声で言い放つ彼女に、鬼は一瞬、目を細めた。だが、すぐに口元に薄い笑みを浮かべる。

「その言葉、どこまで突き通せるのか見ものだな」

 鬼が滝へと歩み出す。

 彼の足は水面より下には沈まず、揺らめく小波の上に浮いていた。

 透明な橋でもかけたようにに歩く鬼が、巫女の眼前に来ると、彼女に落ちる滝の水がパカりと左右に割れる。まるで水までもが鬼を恐れ…彼を避けているかのように。

「まずは身投げをしなかったコトのみ褒めてやる」

 鬼はそう言うと、彼女をふわりと宙に浮かせて、滝つぼから離れた。

「…身体が浮いて…っ」

「暴れるな」

 浮かされた手足では抗いようがなく、彼女は再び鬼の腕の中へ引き戻された。

 冷たい水で冷え切った彼女の身体を、鬼の腕が包み込む。清めの水で身体が冷えたぶん、今度は鬼の肌に温かさを感じた。

(血のかよわないモノノ怪なのに)

 巫女を抱いた鬼が滝から出ると、鬼火がすぐ横まで迫り、光が彼女の濡れた肌を照らし、消えかけの傷跡を青く浮かび上がらせた。

 そして冷えた肌を温め、残った水滴を乾かしている。


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