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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第10章 赤い痕

「なあ、巫女」

 影尾(カゲオ)がふと口を開き、懐から小さな包みを掏り出した。

「玉藻(タマモ)を治した礼だが、これを食うか?」

 彼が差し出したのは、桜色の和紙に包まれた桜餅だった。

 ほのかに甘い香りが漂い、巫女の鼻をくすぐる。彼女は驚きと戸惑いが入り混じった表情でそれを見つめた。

「これは……?」

「人間を軽く化かして手に入れた」

 影尾は悪びれず淡々と答えた。

「オレたちは食べなくても生きていけるんだが、人間がつくる菓子の味は好きなんだ。このモチ、悪くないぞ」

 巫女は彼をしかるべきかを悩んでいた。

 境界に囚われてから、彼女はもう何日も食事を口にしていない。空腹を感じないのも、境界の異常さゆえ……だが、桜餅の甘い香りは、彼女の心にほのかな懐かしさを呼び起こした。

「……いただきます。ありがとう」

 巫女は包みを受け取り、そっと和紙を開いた。桜餅の淡い色が、朝光に照らされて柔らかく輝く。

 彼女は小さく一口かじり、桜の葉の塩気と餡の甘さが口に広がるのを感じた。影尾も同じく桜餅を手に取り、二人で静かに食べ始めた。

「美味しいです」

「そうだろ?」

「ねぇ、影尾?ひとつ聞いてもよいですか」

 桜餅を食べながら、巫女がふと口を開く。

「あなたたちモノノ怪は食事を必要としないのに、…どうして鬼王は、人間をさらって食べているのでしょう」

 影尾は桜餅を口に運んでいた手を止め、驚いて巫女を見た。

「鬼王さまが人間を喰う? それはあり得ない話だ」

 彼はきっぱりと言い切り、わずかに眉を寄せる。



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