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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第10章 赤い痕

「人喰いなんてしてみろ、それこそ呪われかねないぞ!あの方はそんな愚かな真似をする御方ではない。そんなコトするのは知性を欠いた下等なモノノ怪だけだ」

 彼の言うことは、帝(ミカド)の使者が言った話と違っている。

 ただ影尾の強い否定に、巫女は内心でほっと息をついていた。

(やはりそうだったのですね)

 鬼からは、人が喰らうモノノ怪特有の邪(ヨコシマ)な気配がないのだ。人喰い鬼の噂は嘘だったのではとうすうす感じていた。

(それなのにわたしは鬼を祓おうとした……。返り討ちにあって殺されたとしても文句は言えない)

 悪さをしていない鬼を退治しようとしたのだ。彼女はそんな自分を恥じ、反省していた。

「なら、何をするために彼は鬼界を離れて、境界に留まっているのでしょう?」

 巫女がさらに問いかける。影尾は桜餅を手に持ったまま、考え込むように答えた。

「噂によれば……鬼王さまは800年もの間、探し物をしてるらしい。それが人の世にあるんだろうな。だが、それが何なのかは誰も知らない」

「800年……!?」

 途方もない時間に驚き、思わず繰り返した。

「800年……それほど長い間、何かを追い求めて……?」

 彼女の心に、鬼の孤独がほのかに響く。

 名を持たず、ただ " 王 " と呼ばれる存在。彼が求めるものは、本当に " 物 " なのか。それとも、もっと深い何か──。

 縁側に座る二人の間を、偽物の風がそっと通り抜けた。玉藻は巫女の膝で眠り続け、桜餅の甘い香りが漂う。



 その穏やかな瞬間は突然、冷たく重い気配によって破られた。



「余計な話をしているようだ」


「……ッッ」



 背後から響いたのは、鬼の声だった。

 低く、抑揚のないその声は、まるで闇そのものが言葉を紡いだかのようだ。



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