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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第11章 天哭ノ鏡


「 " お前 " は、何処にいる……!?」


 鬼は静かに呟き、黄金の瞳を目の前の鏡に注いだ。


「何故俺は……お前を見つけられぬ……」


 彼の声には、800年にわたる探し物の重みが宿っていた。

 鏡は彼の言葉に応えて、風景を次々と変えていく。

 里から森へ、森から海辺へ、そして古びた社へと。だが、求めるものは見つからない。鬼の指先が鏡台の縁を握り、爪がわずかに木を軋ませた。

 彼の内なる孤独は、鏡の光に映る人界の風景と共鳴し、静かに胸を締め付ける。



「鬼王さま」

 突如、暗闇から声が響いた。

 声の主は、鬼が使役する式鬼(シキ)だ。

 黒い影のような姿で、闇そのものが形を成したかのような姿…。赤い目が闇の中でかすかに光り、恭(ウヤウヤ)しく頭を下げる。着物の裾が床を擦る音が、静寂をわずかに破った。

「……どうした」

 鬼は鏡から目を離さず、聞き返す。

「鬼王さまの命に従い、人界で広まっている人喰い鬼の噂について調べて参りました」

「それで?」

「それに関連し、見て頂きたいものがございます。一度、鬼界にお戻りを」

 そこまで話させて、ようやく鬼は鏡から視線を外し、横目で式鬼を一瞥(イチベツ)した。

「ならば行こう」

 鬼は天哭ノ鏡に背を向け、暗闇の中を進んだ。

 式鬼が先導し、屋敷の奥からさらに深い闇へと続く通路を抜ける。

 通路の壁には、かすかに苔が生え、湿った空気が肌にまとわりつく。やがて、彼らは鬼界へと通じる門にたどり着いた。門は黒鉄ででき、表面には古(イニシエ)の文字が刻まれ、触れる者を拒むような冷たい妖気を放っている。

 門が開くと、闇の向こうに赤黒い空が広がり、遠くで雷鳴のような響きが轟いた。

「……」

 鬼は一瞬、背後へ振り返った。

 屋敷の中、巫女が残された広間を思い出すかのように。

 彼女の清らかな声、言いかけた言葉──それらが、鬼の心に波紋を残していた。

 だが、彼はすぐに前を向き、式鬼と共に鬼界へと踏み込んだ。

 そこは、人の世とも境界とも異なる、冷たく重い空気が支配する世界だ。赤黒い空の下、妖気に満ち満ちた大地が、鬼王の帰還を静かに迎えた。







 ──…






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