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ゆらぎの夜
第3章 雨音に溶ける声
雨が降っていた。
窓の向こう、濡れたアスファルトに街灯の明かりがにじむ。
ソファに丸まって、ひざを抱えていた。
彼がいた場所に、今はもう誰もいない。
部屋の静寂を、雨音がやさしく満たしている。
その音の中に、ふと――彼の声が混じった気がした。
「……大丈夫、ちゃんと、そばにいる」
いつかの夜に、耳元で囁かれた言葉。
柔らかな声とともに、温かい手が背中を包んだ記憶。
私の頬を、何かが伝った。
涙じゃない。雨音のせいだ。そう言い聞かせた。