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木漏れ日をすくう手
第5章 そっと差し出すもの
「えっ、これ……手作り?」
「はい……少しだけ。朝、時間があったので」
言いながら、視線はどうしても先生の手元に落ちてしまう。

けれど椎名先生は、ふっと表情をやわらげた。
「うれしいな。ありがとう。甘いもの、実は好きなの」

その一言に、葵の胸がほんの少しだけあたたかくなる。
気づけば、緊張もゆるやかに溶けていた。

「今日、ここ来てよかった」
先生の声は、昼の光のなかでやさしく響いた。

葵はうなずく。
言葉にしなくても、何かが伝わった気がした。

窓の外には、青く澄んだ空と、揺れる若葉。
誰にも気づかれない場所で、静かに育つ想いがそこにあった。
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