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木漏れ日をすくう手
第1章 やわらかな匂い

春の空気には、どこか柔らかい湿り気がある。
朝のホームルームが終わる頃には、葵の視界はぼんやりと霞んでいた。頭が重くて、ペンを握る手にも力が入らない。隣の席の子にそっと声をかけ、保健室へ行きますと告げて廊下に出た。
カーテンの揺れる、その奥に椎名先生はいた。
白衣の下からのぞくやわらかな色合いのブラウス、すっきりとまとめられた髪。どこか家庭的な雰囲気もあって、教室の先生たちとは違う空気を纏っていた。
「大丈夫? 顔、少し赤いね」
先生の声は、ぬるめのお茶のように落ち着いていて、聞いているだけで肩の力が抜けていく。額にそっと添えられた手のひらが、やさしく体温を測ってくれた。
「少し熱あるね。無理せず休んでいこうか」
促されるままベッドに腰を下ろし、毛布がふわりとかけられる。
その手際に、何も言わずとも察してもらえる安心感があった。自然と、まぶたが重くなる。
朝のホームルームが終わる頃には、葵の視界はぼんやりと霞んでいた。頭が重くて、ペンを握る手にも力が入らない。隣の席の子にそっと声をかけ、保健室へ行きますと告げて廊下に出た。
カーテンの揺れる、その奥に椎名先生はいた。
白衣の下からのぞくやわらかな色合いのブラウス、すっきりとまとめられた髪。どこか家庭的な雰囲気もあって、教室の先生たちとは違う空気を纏っていた。
「大丈夫? 顔、少し赤いね」
先生の声は、ぬるめのお茶のように落ち着いていて、聞いているだけで肩の力が抜けていく。額にそっと添えられた手のひらが、やさしく体温を測ってくれた。
「少し熱あるね。無理せず休んでいこうか」
促されるままベッドに腰を下ろし、毛布がふわりとかけられる。
その手際に、何も言わずとも察してもらえる安心感があった。自然と、まぶたが重くなる。

