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木漏れ日をすくう手
第1章 やわらかな匂い

「この時期はね、体調を崩す子が多いの」
椎名先生の声が、カーテン越しにそっと届く。
淡く漂うシャンプーの匂いが、なんとなく心を落ち着かせる。眠ってはいないが、言葉を返す気にもならず、ただその存在に耳を澄ませていた。
……どうしてだろう。
椎名先生が近くにいると、胸の奥が少しだけ不思議な感じになる。
尊敬とも、憧れとも少し違う。名前のない気持ちが、じんわりと広がっていく。
目を閉じたまま、葵はその感情をそっと抱えた。
今はまだ、それがなんなのか、わからなくてもいい。
ただ、静かな時間の中で、春の気配と先生のやさしさに包まれていた。
椎名先生の声が、カーテン越しにそっと届く。
淡く漂うシャンプーの匂いが、なんとなく心を落ち着かせる。眠ってはいないが、言葉を返す気にもならず、ただその存在に耳を澄ませていた。
……どうしてだろう。
椎名先生が近くにいると、胸の奥が少しだけ不思議な感じになる。
尊敬とも、憧れとも少し違う。名前のない気持ちが、じんわりと広がっていく。
目を閉じたまま、葵はその感情をそっと抱えた。
今はまだ、それがなんなのか、わからなくてもいい。
ただ、静かな時間の中で、春の気配と先生のやさしさに包まれていた。

