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火照るあなたの横にある小説
第2章 触れ合う温度
【雨音にまぎれて】

都会の雨は、どうしてこんなに冷たいんだろう――。
千景は傘を持たずに、駅前の雑踏に立ちすくんでいた。
コンクリートの匂い。すれ違う誰かの香水。
息苦しさに似たこの街で、あの子は平気で笑っていたのだろうか。

「……ちかげ?」

振り返ると、そこに藍がいた。
濡れた前髪を払いながら、息を弾ませて立っていた。
高校の卒業式以来、五年ぶりの再会だった。

「変わんないね、ちかげ。相変わらず、目をそらす癖」

そう言って笑った声は、思い出より少しだけ低くなっていた。
千景はうまく言葉が出ず、頷くことしかできなかった。
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