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火照るあなたの横にある小説
第1章 明かりのむこうに

【風のにおい】
雨上がりの午後、澪は傘を閉じて店の前に立っていた。
窓の向こうで本を並べていた灯が気づき、扉を開ける。
「こんにちは」
濡れた前髪をかき上げる仕草に、灯の胸が静かに高鳴った。
「ここ、落ち着くんです。誰かが静かに本を読んでる空間って、好きで」
灯は、微笑んで奥のソファ席に澪を案内した。
その手の温度が、少しだけ熱を帯びていた。
本を読む澪の横顔は穏やかで、けれどどこか寂しげだった。
灯は、それを知りたくなった。なぜこの店に、何度も通ってくるのか。
「読みます?」
澪が差し出した詩集のページには、こう書かれていた。
――誰かの気配を、風が運んできた――
灯はゆっくりと頷いた。
雨上がりの午後、澪は傘を閉じて店の前に立っていた。
窓の向こうで本を並べていた灯が気づき、扉を開ける。
「こんにちは」
濡れた前髪をかき上げる仕草に、灯の胸が静かに高鳴った。
「ここ、落ち着くんです。誰かが静かに本を読んでる空間って、好きで」
灯は、微笑んで奥のソファ席に澪を案内した。
その手の温度が、少しだけ熱を帯びていた。
本を読む澪の横顔は穏やかで、けれどどこか寂しげだった。
灯は、それを知りたくなった。なぜこの店に、何度も通ってくるのか。
「読みます?」
澪が差し出した詩集のページには、こう書かれていた。
――誰かの気配を、風が運んできた――
灯はゆっくりと頷いた。

