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大きなクリの木の下で
第1章 初めて見せた弱さ

「よしっ!捕まえたぞ!」

そのまま掴んでろよと左右から二人の男が彼の顔面をめがけてハイキックを繰り出す。

「よいしょっと…」

彼は両手を上に上げて、その姿勢のままスッとしゃがみこんだ。
易々と背後の男の拘束を抜け出したものだから、
左右から二人の男の繰り出したハイキックはものの見事に先程まで彼を拘束していた男の顔面にヒットした。

しゃがみこんだ彼はハイキックを繰り出すためにがら空きになった股間めがけて右、左とジャブを打ったものだからまともに金的にヒットした。

たった数秒で三人の男は路地にダウンしてしまっていた。

「だからよしなさいって言ったのにさ」

そう言いながら、腰が抜けてしゃがみ落ちた静香に近づき
「雨宮さん、もう大丈夫ですよ」と顔を覗き込んだ。

酔っぱらって霞む視界でも、この至近距離だと彼の正体をハッキリと確認できた。
なんと、三人の男をノックダウンさせてしまったのは、会社では足手まといになって役立たずの竹本伸和だったのである。

「竹本くん…何でここに…」

「だって、俺んち、すぐそこだし」

その言葉を聞いて、安心したのと酔いが最高潮に回ってきて静香はその場で寝落ちした。
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