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大きなクリの木の下で
第1章 初めて見せた弱さ

「どうしよう…雨宮さんをお持ち帰りしちゃったよ…」
真っ暗の部屋の灯りをつけて、抱き抱えてきた静香をくたびれたスプリングの自分のベッドに横たえた。
「あ、でも、こういうのってお持ち帰りじゃなくて介抱というのかな?」
スースーと寝息を立てて聞いているはずもない静香に向かって竹本は一生懸命に独り言のように話しかけた。
「お父さんを亡くされて、きっと寂しいお酒で悪酔いしちゃったんだね」
そんなことを言いながら「上着、シワになっちゃうから脱がしてあげるね」と慣れない手付きで静香のジャケットを脱がした。
「お父さん…」
夢でも見ているのか、静香は父の名を呼びながら涙が目尻から流れ落ちた。
「強がらなくてもいいんですよ
人間、誰しも悲しいときは泣けばいいんだから」
親指の腹で涙を拭ってあげると、会社では到底見ることの出来ない静香の女らしい寝顔に竹本は胸をときめかしていた。

