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大きなクリの木の下で
第1章 初めて見せた弱さ

皆さん、少し休憩させていただきますね
誰も見向きもしないのがわかってはいるものの、
雨宮静香は一礼して小走りで立ち去った竹本を静かな足取りで追いかけた。
休憩室では竹本伸和が旨そうに缶コーヒーを飲んでいた。
静香はスッと彼の前に立ちふさがり、腰に手を当てて仁王立ちで椅子に深々と腰を落としている彼を見下ろした。
「あ、雨宮さんも何か飲みます?
俺、奢りますよ」
ズボンのポケットに手をいれて財布を取り出そうとする彼を制しながら「あんたさあ、やる気あるの?」と苛立ちを隠そうともせずに言った。
「やる気はあるんですけどね、どうも活字を見ていると眠気が襲ってきて…」
「言っておきますけど、私たちの校正一つでその作品が大ヒットするか、駄作になるかがかかってるのよ!」
「でも、それって作者さんの書いた作品に手を加えるってことですよね?
そういうのってあまり好ましくないんじゃないかなあ…なんて思ったりするわけですよ」
彼はそう言って飲み終えた空き缶をゴミ箱に投げ捨てた。

