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大きなクリの木の下で
第3章 同窓生の美代子

『おいおい、どうしたって言うんだ…
俺、何か彼女の気に障るようなことをしたか?』
一人ポツンと残されて、竹本は自問自答した。
まあ、よくよく考えてみれば、
酒の酔いのせいにして、あれだけのボディタッチをしたのだから、酔いが覚めて冷静になってしまえば憤慨されても仕方ないかなと自分を責めた。
でも、あれって友人から恋人に昇華するための立派なプロセスだったと思うんだけどなあ…
自問自答を繰り返すが答えは出てこない。
でも、こちらが些細なことと思っていても、
彼女にしてみれば傷つく事だったのかもしれないか…、
しょんぼりしてポロアパートの我が家に帰りつくと、
玄関前にしゃれた真っ赤なスポーツカーが横付けされていた。
『誰だよ!迷惑だなあ…』
そう思ったが、よくよく記憶を掘り起こせば、
その車って金曜の夜に静香の部屋からここまで送ってくれた彼女の大学時代の友だちのものだったと思い出した。
ゆっくりと前に回って運転席を覗き込むと、
間違いなく美代子と名乗った女が退屈そうにスマホゲームをしていた。
コンコンコン…
運転席のドアガラスをノックすると
ようやく帰ってきたわねと運転席の美代子はスマホから顔をあげて、竹本だと確認するとニッコリと微笑んだ。
「あの…美代子さん…でしたよね?」
「あら、名前を覚えてくれていたの?光栄だわ」
「ここに、なんのご用ですか?
ここ、路駐すると皆が迷惑するんですけど」
「ああ、そうね、迷惑だろうなと思いながら駐車してたの」
美代子はクスクス笑うと
「いつまでもここに停めておけないから乗って」と
竹本に助手席に乗り込めと命じてきた。
『本当に自己中な人だなあ』
金曜の夜も連絡なしに静香の部屋を訪ねてきたり、
突然現れて、今度は車に乗れと言ってくる。
車に乗り込むと、車はどんどんと都心部を抜けて山間を走り出す。
「あのどこへ…」
「あなたと行きたいところがあるの」
やがて山上の小さな公園で車を停車させた。
「見て、ここからなら東京湾が一望できるのよ」
そう言われれば目の前に東京湾がハッキリと見てとれた。
「私のお気に入りの場所なの」
「景色を見せるためにわざわざ?」
「一人で見ても面白くないでしょ
あなたとゆっくり眺めたかったの」
そう言うと運転席から身を乗り出して抱きついてきた。

