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大きなクリの木の下で
第4章 文豪 中岡清史郎

校正部の部屋に入っていくと、
朝っぱらから編集部の男性と校正部の部長が激しく言い合っていた。
「おはようございます…何かありましたか?」
険悪なムードを和らげようと、なるべく穏やかに挨拶をすると、
「君か!?この原稿を校正したのは?」と訳もわからず怒鳴られた。
「だから何度も言ってるだろう!彼女を責めるのはお門違いだって!」
なにやら編集部は静香に文句がありそうで、
それを部長が必死に咎めを引き受けようとしてくれているようだった。
「お前さあ!いったい何様のつもりだよ!
作家の大先生の原稿をめちゃくちゃにしやがって!」と赤ペンで訂正しまくった原稿を片手に編集部の彼は息巻いた。
「原稿?めちゃくちゃ?」
彼の手から原稿を引き剥がし、静香はしっかりと確認した。
間違いなく校正担当は静香でサインまでしてある。
「ちゃんと校正したつもりですけど?」
「作家の大先生さまがおかんむりなんだよ!
これはもはや私の作品ではないってね」
それがどうかしましたか?と
静香も売られた喧嘩は買ってやろうと思った。
それほど虫の居所が悪かった。

