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大きなクリの木の下で
第4章 文豪 中岡清史郎

「文豪なら、なおさら正しい文法で書いてもらいたいだけです。
おそらく何万人もの読者が新刊の発売を首を長くして待っていると思うんです。
そんな読者の期待に応えるべきなんです」

「まあ、もっともらしい台詞だけどね…
君さあ、彼氏とかいないんだろ?」

「余計なお世話です!」

「もっと可愛げがないと男が言い寄ってこないよ」

本当に余計なお世話だと思った。
タクシーの運転手がいなければ、この場でおもいっきりこの編集者の横っ面をビンタしてやりたい思いだった。

ほどなくしてタクシーは大作家の豪勢な門構えの一軒家にたどり着いた。

インターホンを鳴らすと
- どうぞ、入りたまえ -
と、いかにも堅物らしい声が二人を出迎えた。
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