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大きなクリの木の下で
第4章 文豪 中岡清史郎

「お前なあ!先生にちゃんとお詫びしろよ!」
小声で静香を叱りつけると
「先生!お待ちください!先生!先生ぇ~!」と小股で腰巾着のように中岡清史郎を追いかけた。
『まるで安っぽい三文芝居をみせられているようだわ』
辟易しながら静香も「お邪魔させていただきます」と
奥の間に歩みを進めた。
「日本茶で構わんよな?」
家政婦が体調が悪いとかで、昨日から休暇を与えているので大したもてなしも出来んけどなと
大御所自らお茶を淹れてくれた。
「あ、そんな!先生の手を煩わせずとも
そんなことはウチの雨宮にやらせますので!」
まあ、いいから、いいからと君は座っていなさいと中岡に制されて、担当の編集者である男はあたふたしながら困ったように汗をびっしりとかいていた。
「君ぃ!ここは君がテキパキと動かないといけないだろうが!」と静香を叱責すると「かまわんよ、今の若い子はどうせ茶の淹れ方も知らんだろうしな」となみなみと注いだ茶をテーブルに並べてくれた。

