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大きなクリの木の下で
第4章 文豪 中岡清史郎

「さあ、あんたらの弁明を聞く前に茶でも飲んでくれ」

勧められて熱々のお茶を一口すすった。
熱くてとてもではないが飲めそうもない。
そんな煮えたようなお茶でも編集の男は「美味しゅうございます、これは玉露でございましょうかね?」とゴクゴクと熱湯に近いお茶を美味しそうに喉に流し込んだ。

『玉露?よく言うわ、こんな不味いお茶を飲んだのは久しぶりよ』

少しだけ喉を潤しただけで静香は茶碗の蓋を閉じた。

「儂の淹れた茶は不味くて飲めんと言うわけか」

ため息をついて中岡は再びギョロリと静香を睨んだ。

「では、本題に入らせていただきます
今回の校正の件につきましては、なにぶんにも世間を知らずのひよっこがやらかしてしまったもので、編集部としましては先生の入魂の一作に手を加えようなどとは一切思っておりません」

ですので、今後一切ウチの出版社から新作を出さないという件は何卒、穏便に収めていただければと…

緊張している上に熱いお茶をイッキ飲みしたものだから、
編集の男は汗をダラダラ流しながら作家先生の許しを乞うた。

「あんたの気持ちは快く受け取ろう
だが…問題はこの女だ!」

再び怒りが込み上げてきたのか
中岡は唇をワナワナさせながら口から唾を飛ばしながら静香を睨み付けた。
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