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大きなクリの木の下で
第4章 文豪 中岡清史郎

「失礼ですが、先生は私の校正が気に入らないとでも?」
静香は自分に非がないと言わんばかりに反対に中岡を睨み返した。
「お前は儂に謝りに来たのではないのかね?」
いったいお前のところの出版社は若い子にどんな教育をしているんだと顔を真っ赤にして怒鳴った。
「まあ…誤字脱字の校正は大目に見てやろう…
しかし…これはなんだ!」
中岡は校正済みの原稿をテーブルに叩きつけた。
「お前は赤ペン先生にでもなったつもりか!
そんなに儂の書く文章が気に入らんと言うのかね!」
「好きで添削したわけではありません
それが私の仕事ですので…」
「儂の作風を理解もせんと、減らず口だけは一人前だな」
「先生の作品は全て読ませていただきました」
「ん?さすらいシリーズだけでも22作もあるのだが、全て目を通したと?」
「ええ、失礼ですが、新作は私の目から見ても力量が感じられません」
ほほう、例えば?
中岡の目から怒りが消えて、ほんの少しだけ柔和になった。

