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大きなクリの木の下で
第5章 拉致監禁

「すいません…あの、私、502号室に住んでいる大場美代子の友人なんですが…」
- なんだい、また大場さんかい -
あからさまに管理人は、うんざりしたような口調だった。
り
- 大場さんなら留守だよ -
「ええ、音信不通なので心配で来てみたんです
彼女、独り暮らしだから部屋でその…倒れているんじゃないかと…」
- いや、それはないね -
管理人のぶっきらぼうな口調に、静香の隣でインターホンを聞いていた竹本がカチンときて横から割って入った。
「それはないって、どうして言いきれるんですか!
とにかく部屋の中を確認したいんですよ!」
- 大場さんの部屋の確認なら、今朝がた彼女の勤め先の面々が実家のお母さまを連れて確認に来ましたよ。
ええ、私も一緒に部屋に入ってこの目で確かめましたから間違いありませんよ -
「部屋は…部屋は荒らされた形跡はありませんでしたか?」
もっと情報が知りたいと、インターホンに顔を近づけて静香が食い下がった。
- 荒らされるもなにも、ほんと生活感のない殺風景な部屋でしたよ。
もういいでしょ!こっちは晩飯の途中なんですよ -
そうぶっきらぼうにいい去ると、インターホンはガチャリと切られた。
「どういうことなんでしょ?」
困り果てて静香が竹本を見つめてきた。
至近距離で見つめられて、思わず竹本は赤面してしまう。
平常時であるならば、欲情して唇を奪いたい衝動にかられるのだろうけど、今はそんなことをしている場合ではなかった。
「たぶん、会社にも無断欠勤しているのでしょう
だから会社は親御さんに連絡をして上京してもらって部屋を確認したのではないでしょうか?
おそらく、その足で警察に出向いて失踪届けも提出していると考えていいでしょうね」
「美代子のバカ!…どこに行っちゃったのよ」
とりあえず部屋の中で孤独死を迎えているという危機は脱したのだが、かえってそれが音信不通になっている不安を募らせた。
「とりあえず、もうしばらく様子を見ましょう」
素人が一人の女性の追跡調査なんて出来るはずもない。
悔しいかな、これ以上どうすることもできない。
「今夜は解散しましょう」
果報は寝て待てと言うでしょ。
そのように焦る静香を納得させて、タクシーを拾って静香を乗せた。

