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大きなクリの木の下で
第5章 拉致監禁

遠回りになると運転手が言った通りかなりの遠回りになった。
運転手も申し訳ないと感じたのか「乗車賃はここまでで結構ですから」とメーターを回送に切り替えてくれた。
こんなところにラーメン屋なんてあるの?と思うほど
タクシーは工場地帯に入ってゆく。
「工場の工員相手のラーメン屋なんですよ」
運転手が言うように昼間なら作業員がウロついて賑やかなのだろうけど、夜ともなると人っこ一人おらずに寂しい町並みだった。
特に昨今の不景気で廃業した工場も多いようで、今にも朽ち果てそうな工場がいくつもある。
『高度成長期は賑やかな町だったんだろうなあ』
廃墟の工場をタクシーの窓越しに眺めていたその時だった。
一つの廃工場の空き地に見覚えのある真っ赤な車が駐車していた。
「えっ?」よくよく見てみればダッシュボードにパンダのぬいぐるみ…
間違いない!美代子のマイカーだ!!
「停めて!!運転手さん、ここで停めてください!!」
タクシーを停車させて「少ししたら戻ってくるからここで待っていてくれないかい?」と告げた。
こんなところでタクシーを乗り捨てれば帰りのタクシーを拾えるかわかったものじゃないので、タクシーをそこに待たせて竹本は真っ赤な車が駐車してある廃墟の工場へと急いだ。

