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遠い夏の続きを、もう一度
第2章 再会
指先が触れた瞬間、彼女はわずかに身をすくめた。
その反応が、私の心をざわつかせる。

ふたりきりの、音のない部屋。
壁に反射する明かりすらも、そっと息をひそめているようだった。

「……やっぱり、変かな」
彼女がぽつりとつぶやいた。

「私たち、姉妹なのに──」
その声には、戸惑いと、罪悪感と、かすかな熱が混じっていた。

私はしばらく黙っていた。何を言えばいいか、言葉が見つからなかった。
けれど、彼女の肌に触れた指は、離れなかった。

「変かもしれない。でも……」
私はゆっくりと顔を近づけ、彼女の額に唇を落とす。

「私は、あなたが笑ってくれるなら、それでいい」
その言葉が、どこまで届いたのかはわからない。

けれど彼女は、そっと瞳を閉じ、静かに吐息をもらした。
まるで、言い訳をしなくていい場所をようやく見つけた人のように。

抱き寄せた身体は、思ったより細くて、あたたかかった。
そのぬくもりは、かつての夏の記憶──小さな浴衣姿、手をつないで歩いた縁日の帰り道、
私の部屋のベッドで、ぎゅっと抱きしめ合って眠った夜──
そんな過去のすべてを連れ戻してきた。

でも今は、もうあの頃とは違う。
同じ肌でも、違う熱。
同じ匂いでも、違う鼓動。

彼女の指先が、私の肩にすがるように添えられたとき、
私はようやく覚悟した。

迷いと、甘さと、赦しと、欲望が、
すべてひとつに絡まっていく。

「ねぇ……好き、だよ」
彼女がそう言ったとき、もう、誰にも止められなかった。

月明かりに浮かぶ肌が、少しずつ汗ばんでいく。
声を殺すように触れあい、震える吐息が静寂を染めていく。
ただ、求める気持ちだけが本当だった。

──ふたりが大人になった意味を、
この夜に、ようやく確かめていた。
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