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遠い夏の続きを、もう一度
第2章 再会
翌朝、カーテンの隙間から射し込む光に、目を細める。
シーツのぬくもりがまだ肌に残っていた。
隣を見ると、彼女は眠っていた。まるで昔のまま──無防備で、穏やかで。
けれどその顔には、大人の影が静かに宿っていた。

私の胸に、ひたひたと冷たいものが満ちていく。

これは――許されることだったのだろうか。

姉として、
女として、
誰かの愛する人として。

記憶の奥にしまいこんでいた感情が、昨夜の熱と混ざり合って揺れる。
彼女の指が、夢の中で探すようにシーツをつまんだ。

「起きてるの、知ってるよ」
彼女の声は、かすかに笑っていた。

私は返事ができなかった。
ごめんね、という言葉が喉の奥で絡まって出てこない。

「私ね、ずっと言いたかったことがあるの」
彼女はうつぶせのまま、こちらを見ずに話し始めた。

「思春期に、あなたが遠くなったのが、すごく寂しかった」
「でも私、それをうまく伝えられなくて……大嫌いって言っちゃった」
「本当は、ただ……あなたのことが、好きだったの」

静かな言葉が、胸の奥を静かに貫いた。
涙が出るかと思ったのに、出てこなかった。
代わりに、ずっと胸の奥でこわばっていたものが、少しずつほどけていくのを感じた。

「許してほしいのは、たぶん私の方なんだと思う」

私はようやく、彼女の手をそっと握った。

「……私も、ごめん」
「好きって言われて、うれしかった。……すごく、うれしかったの」

その言葉を口にして初めて、自分がどれだけ彼女に飢えていたか、気づいた。
それは姉妹としての愛だったのか、
それとも、ただの依存だったのか。

どちらでもいいと思った。
それは、ふたりだけの物語の中で答えを出せばいい。

彼女は、今日、婚約者と会うと言っていた。
だから私は、この手をいま握っていても、
きっと、明日には離すことになる。

それでもいい。
一度、ちゃんと確かめたから。
あの夏の続きを、ほんの少しだけ、歩くことができたから。
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