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まぶたに灯る夜
第1章 はじまりの足音
社員寮の廊下は、夜になると少しだけ心細くなる。誰かの足音が、遠くから聞こえてきて、そしてすぐ消える。私が自室の鍵を探してもたついていると、「お疲れさまです」と、声がした。

振り返ると、陽菜がいた。いつもの制服姿。少し乱れた前髪と、タオルを抱えたままの素肌がまぶしい。

「ジム、行ってたの?」 「うん、ちょっとだけ。あ、これ汗すごいから……ごめんね」 「全然。なんか、陽菜って健康的だね」

私の言葉に、陽菜はふっと笑って、鍵を回す私の背中を見送った。何でもない会話。それでも、どこか胸に残る。彼女の声のトーンや、タオルの隙間から覗いた鎖骨の線。

この日を境に、私は陽菜とよく話すようになった。洗濯機前で出会ったり、廊下で一緒になったり。共用のキッチンで、どちらともなく簡単な料理を作り合う日もあった。

彼女の笑顔は、ふわりと人を包み込む。けれど、たまに遠くを見るような横顔になると、何も言えなくなる。

ある日曜の夕方、ふたりでカレーを作った。スパイスの香りに包まれながら、「こういうのって、実家思い出すよね」なんて話す。彼女が玉ねぎを炒める仕草に、なぜか目が離せなくなる。

「変なこと言ってもいい?」と陽菜が唐突に言った。「私、寮生活って苦手だと思ってた。でも……」

「でも?」

「いまは、ちょっと楽しいかも」

私の胸の奥に、小さな鐘の音が鳴る。それは心地よく、でもくすぐったくて。私はただ笑って、うなずくことしかできなかった。

その晩、布団に入った私は、彼女の言葉を何度も反芻した。あのとき、陽菜は私の目を見ていた。まっすぐに。

まぶたの裏に、陽菜の笑う顔が残る。私は今夜も、眠るのが惜しいような気分だった。

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