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まぶたに灯る夜
第3章 朝の匂い
目覚めた瞬間、私は隣にある温もりに気づいた。

柔らかな布団の中、陽菜が私の肩に額を寄せて眠っていた。寝息は穏やかで、まるで昨夜の熱がそのまま残っているようだった。

ゆっくりと体を起こすと、シーツの中の熱が、肌にまとわりついて離れない。私の指先には、まだ彼女の手の感触が残っていた。

陽菜が目を開ける。寝ぼけたままの視線が私に焦点を合わせたとき、頬がふわりと赤く染まる。

「……おはよう」

その声が、胸の奥に染み渡る。

私は何も言えず、ただ彼女の髪を指先でなぞった。沈黙の中に、ふたりの心音だけが響く。やがて陽菜がそっと私の首に腕を回し、私の額に唇を落とした。

それは、昨夜の熱を優しくなぞるような、静かで確かなキスだった。

「恥ずかしいけど……昨日、後悔してないよ」

その言葉に、私の胸はじんわりと温かくなる。私は陽菜の手を握り、そっと頷いた。

「私も……嬉しかった」

カーテン越しに朝日が差し込む。ゆっくりと光がベッドを満たしていく中、私たちは言葉を交わさず、ただ互いの温度を確かめるように額を寄せ合った。

新しい朝が、静かに始まろうとしていた。
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