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雨夜に灯る
第3章 紙の匂いと距離の秘密
書店の奥には、小さな読書スペースがあった。
低いテーブルに、柔らかな光のランプ。壁ぎわには古びたソファがふたつ、向かい合うように置かれている。
「ここ、良ければ」
詩織が指さしたのは、左側のソファだった。
美沙はためらいがちに腰を下ろし、買ったばかりの詩集を膝の上でそっと開いた。

「このスペース、わたししか使わないんです。常連ってほどじゃないけど……ここ、わたしの逃げ場所みたいなもので」
詩織がそう言って、向かいに座る。
その目線の向こうに、もう一冊の本が差し出された。

「これ、好きかもしれないなって思って」
手渡されたのは、海外の女性作家の短編集だった。
しっとりとした装丁。タイトルは、静かな雨音のように優しい。

指が触れる。ほんの一瞬だったのに、美沙は呼吸が浅くなるのを感じた。
目が合う。詩織の瞳の奥に、なにか言いかけた言葉が宿っているようで、美沙は言葉を失った。

「……こういうの、迷惑ですか?」
詩織の声は、ささやくように小さく、けれど真っ直ぐだった。

「ううん。迷惑どころか……ちょっと、うれしい」
その言葉を口にするまでの間が、いつもより少しだけ長かった。

ふたりの間にあった空気が、静かに、柔らかくほどけていく。
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