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雨夜に灯る
第2章 静かな常連
美沙は、雨の日を選ぶようにして、その書店に通うようになった。
晴れの日にも、雲の切れ間にわざと足を向けたことがある。けれど、晴れた日のあの店は、なんだか少しだけ味気なかった。
雨粒がガラスをつたう音と、棚のあいだから聞こえる紙をめくる音。
静けさがぬくもりに変わるのは、いつも雨の日だった。

「また来てくれたんですね」
いつもの声がする。あのときと同じトーンで、同じ距離で。

「ええ。なんだか、落ち着くので」
そう答えると、彼女――詩織は、少しだけ笑った。

ふたりで並んで、詩集の棚を眺める。
彼女が手に取ったのは、中原中也の薄い一冊だった。

「この人の詩、たまに怖くなります。でも、好きなんです」
ページを開いた指先が、しなやかに紙の上をなぞる。

「どうして?」
問い返すと、詩織は少しだけ顔を横に傾けた。

「なんていうか……誰にも届かない気持ちを、ずっと言ってるみたいだから」
そう言って、視線をこちらに戻す。

美沙は、鼓動がひとつ遅れて跳ねた気がした。
その目を見て、無防備すぎると思った。けれど、見つめ返すことをやめられなかった。
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