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地を這う蜘蛛
第1章 地を這う蜘蛛

もちろん違うよ。避ける人の視線の先には大きな蜘蛛。直径十センチはあろうタランチュラがまさに車内の地をのそのそと這っていた。
それは自由自在 赴くまま 私は詳しくはないがおそらく外来種だろう。日本にはまずいない。
人の足元をそれこそ振り払うような我が物顔な大きな蜘蛛
毒蜘蛛かも定かではないが、なんとなく誰もが踏むのを躊躇していた。古い認識だけど縁起物だしね。しかし小さな悲鳴は続き皆が皆避ける。そして、いよいよ私の方へとやって来た、その時だ。


座席に座る労働者風のお爺ちゃんが容赦なく踏み付けた。
プチっという嫌な音がした。そしてその大きな蜘蛛は誰かの足元から足元へと華麗なるパスの末に扉の前。後は到着した駅のホームの隙間の闇にへと葬るだけになった。
嫌なものを見た、これが私の率直な感想。もちろん誰一人としてその労働者風のお爺ちゃんにお礼をするものなどいない。
ただね、無慈悲な現実、私は踏み潰された、それこそ誰かの意思 思考を見せつけられたような気がした。

その感覚は当たるんだよ。

次の瞬間。私の目の前は真っ暗になった。
強烈な痛みが身体をこめかみを貫く。そして目の前の風景が真っ赤に染まる。

そう、こいつはタランチュラなどでははない。正確に記すならば
誰かが精巧に作った毒ガス蜘蛛なんだ









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