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切り裂かれた衣
第5章 星空の下で
 衣美は匠の顔をじっと見つめる。
 匠も衣美のことをじっと見つめながら何かを考えているようだった。

「お兄ちゃん……私に気を使わなくてもいいからね。私のこと……大切にしてくれているのは伝わっているから」

 衣美に見つめられていた匠は、ポリポリと頬を掻いてから恥ずかしそうな表情を浮かべた。

「いいよ。俺もその……衣美のこと、もっと知りたい」

「…………」

 自分から話を出したことなのに、匠の返答に思わず沈黙してしまった。今度は匠の方が真剣な眼差しで衣美を見つめた。

「衣美の事をもっと知りたい。好きな物とかだけじゃなく……衣美の全部を、もっと深く知りたい」

 匠は床に手を置くと、ぐっと顔を近づけてくる。

「……」

 その視線の熱さに堪えられず、衣美は俯いた。


「衣美のことが大好きだから」


 しばらくの間、室内は沈黙に包まれていた。

 衣美は、顔を赤らめてじっと俯いていた。

(何……これ……)

 胸がジンジンとする。ドキドキとキュンキュンとは違うこの感覚に胸を押さえた。涙が出そうなくらい幸せというのはこんな気持ちなのか。

 匠はいつも好きという気持ちを伝えてくれる。けれど、衣美が思っていた以上に真剣に考えてくれていたのだと思うと、嬉しくてたまらない。

 衣美は、床の上に置かれている匠の手にそっと自らの手を重ねた。

「私も……お兄ちゃんのこと、もっと知りたい。いいよ……その……今日は大丈夫な日だから……遠慮しないでいいんだよ」

 自分から誘ったのはそんな日だからなのに「遠慮しなくていいよ」というのは可笑しいかなと衣美は恥ずかしくなった。

 匠は、再び照れたように頬を掻いた。

「ありがとう……その、あの……」

 匠は、衣美を抱きしめた。

「…………」

 衣美もそっと、匠の背中に手を回した。
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