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リクエストのラストワルツ
第1章 意外な出会い

「ここ、よく来られるんですか?」
連子格子の引き戸で仕切られた個室ブースで向かい合ってから慎也が訊ねると、クリニックの同僚と2度ばかり来たことがあるだけだと冴子が応えた。
ビールでいいかしら、とほぼ一方的に言ってから料理のオーダーもてきぱきと決めていく冴子を慎也はただうなずきながら見ているだけだった。
「久松さんはお休みどうしてるの?」
「土日のどっちかはダンス教室に行ってて…」
慎也が少し恥ずかしそうに途中まで言いかけた瞬間、冴子が大きな眼をさらに見開いて叫んだ。
「ええっ!? どこのダンス教室!?」
「駅からすぐのところの須賀川ダンス教室というところです」
それは冴子が通っている教室だった。
「え~っ! わたしもそこに行ってるのよ!」
「ええっ!!」
今度は慎也が叫ぶ番で、思わずこぼしたビールを拭く慎也を手伝いながら、冴子が気ぜわしく訊ねる。
「いつから行ってるの? 土曜だけ?」
「こっちへ来て、5月頃からです。木曜日の夜と土曜か日曜の午前中かな…」
「そうだったのね…」
冴子が通っているのは休診日の木曜と日曜の午後だったのである。
4か月以上すれ違っていたのだと思った。

