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リクエストのラストワルツ
第1章 意外な出会い

「あの… やっぱりどこか食べに行きませんか?」
助手席の慎也が遠慮がちに言った。
「え? どうして?」
「えっと… 女性のお宅にいきなりだと… それに1日汗もかいてるし…」
まだ季節は夏の名残がしっかり残る9月の終わりだった。
「そうね。 じゃあ、これだけ置いてくるから待っててくれる?」
5分とかからずにマンションの駐車場に着くと、生ものを冷蔵庫に入れてくると言って冴子はエントランスへ消えた。
3階建ての瀟洒な外壁タイルのマンションを、慎也は前を通ったことがあるなと思った。
その3階の1室に灯りが点き、あの部屋なんだと思っている間もなく灯りが消えるとほどなくポーチだけ手にした冴子が姿を現した。
「ね、歩いて行きましょ。 車だとお酒飲めないし」
「あ、はい。 お酒飲まれるんですか?」
「少しだけね」
冴子がわずかに首を傾けながら微笑んだ。
マンションから100メートルも歩かないうちに幹線道路に出ると、そこにはファーストフードから居酒屋までいろんな店がある。
「何がいいかしら?」
「ぼくは何でも大丈夫です。」
「じゃあ、和食でもいい? 落ち着けるし」
「はい、和食好きです」
「良かった!」
少しだけ会話が弾むようになり、ふたりは和食チェーン店のドアを引いた。

