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第1章 意外な出会い

（今日、彼の予約は午後の最初だったわね、確か…）

　三上冴子は休憩室で同僚とランチを取りながら考えていた。

　冴子が歯科衛生士として勤めている藤川歯科クリニックの午後の診療は２時から始まる。
　その土曜日、2か月ぶりに久松慎也が歯の定期検診に来るはずだった。

　休憩時間を終えて診察室に向かうとき、小さな待合ホールにある受付の前で、冴子はすでにそこに待っている３人の予約患者の中に慎也がいるのを見つけて声をかけた。

「こんにちは、少しお待ち下さいね」

　慎也は「はい」と伏し目がちにはにかんで返事を返すと再びスマホの画面に眼を落とした。
　
（相変わらず内気そうな子ね…）

　担当して３回目になるが、おとなしそうで端正な顔立ちをした彼のことが冴子は妙に気になっていたのである。