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リクエストのラストワルツ
第1章 意外な出会い

「その後変わりはないですか?」
「はい、大丈夫です」
「それはよかった。エプロン付けますね」
「はい」
いつもの会話を交わしながら、冴子は検診のための慣れた準備に入る。
口を開けさせられた慎也は、眼をつぶって冴子になされるがままの体となった。
明るく陽気で丁寧なクリニックとネットの口コミに出ていたので、ここを選んだ社会人1年生の慎也であったが、治療中にもかかわらず女性の助手や衛生士と交わす院長の、時に猥談ともなる雑談とそれに臆面もなく受け答えする冴子たちのあけすけな雰囲気が彼には不快ではなかったし、喋ることができる状態なら会話に加わりたいとも思えるのだった。
眼を閉じている慎也の耳には、3人いる女性の中で潤いのある冴子の声が一番心地よかったし、時々肩に触れてくる胸のふくらみのやわらかさが密かな嬉しさでもあった。
(ひとまわりくらい歳上なのかな…)
と思いながら時々尋ねられる問いかけに口を開けたまま小さくうなずいているうちに、30分足らずの検診は終わった。
「お疲れさまでした。次はまた2か月後くらいに来られるかしら?」
「はい、ありがとうございます」
また伏し目で応える慎也に微笑みを返しながら、冴子は
(もっと早くきてくれてもいいのよ)
と心の中でつぶやいていた。

