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リクエストのラストワルツ
第3章 弟のような彼

次の日曜日の午後、慎也は須賀川ダンス教室へ出かけた。
いつもと予定を変えて、冴子と同じ時間帯にしたのである。
冴子の姿を見るのは1週間ぶりだった。
靴を履き替えてホールに出ると、すでに冴子はレッスンを受けていて、踊っているのは慎也が好きなルンバだった。
ひざ下丈の藤紫のフレアスカートとそこからのぞくシルキーなストッキングに包まれた細い脚、ローズバイオレットのラメ入りハイヒールシューズが清楚な大人女性を醸し出していて、ホールに出ている生徒の中で眼を引いていた。
ターンの時に慎也を見つけた冴子が一瞬だけ笑顔を見せたが、舞い上がったスカートを一連の動作の中の開いた腕の先の小指でさりげなく払い落とす優雅な仕草に、慎也は見惚れていた。
時間になって慎也もホールに出たが、案の定レッスンには身が入らずミスを繰り返して教師に注意されてばかりの50分だった。

