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リクエストのラストワルツ
第3章 弟のような彼

夕方、前の週に続けて慎也は冴子の部屋にいた。
レッスンのあと、駅前の喫茶店で待ち合わせてお茶をしてから、冴子の車でそのまま部屋を訪ねたのである。

「やっぱりレッスンは同じ時間じゃないほうがいいです」
「どうして? 一緒じゃいや?」
「冴子さんが気になって身が入らないんです」
 
 冴子が投げだした脚のきれいなつま先を眺めながら慎也は言った。

「わたしは慎也くんを見ていたいんだけどなぁ…」
「すみません… もう少し先なら…」

 謝りながら慎也は続けた。
 
「冴子さんの脚に触りたい」
「だめよ、汚いから」
「きれいです、とても」

 そう言うと、慎也は冴子の足首をつかまえて顔を寄せた。

「だめだめ、待って」
「きれい…」

 冴子の抵抗を振り切って、慎也は掌にとらえたその足の甲に頬ずりをした。
 不意打ちのようにして脚を持ち上げられた冴子は両手を後ろに回して倒れるのを防いだが、慎也の眼にはさっき教室で見とれていたスカートの奥に隠されていた真っ白なショーツが透きとおった光沢のあるストキング越しに見えた。

「だめよ」
 
体勢を立て直した冴子がスカートを押さえながら慎也をたしなめたが、彼は親指を甘噛みして、それを離そうとしなかった。

「もういいでしょ… いいこだから…」
「すみません… 冴子さんの脚、ほんとにきれいだから…」
「もおぉ…」

 抗議しながら、冴子は少し嬉しかった。
 短時間だったとはいえ靴を履いていたばかりの足に頬ずりされたのは初めてのことだったのである。
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