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第1章 誘い

智恵さんは離婚したことを今夜私に話したかったのだと、だから今夜私が誘われたのだと気付いた。

私は続けて、「じゃあ大分に帰るのも…今回のことがあったからですか…？」
と言い終わる前に、智恵さんが言葉をかぶせてきた。
「うん…父が亡くなってから、母は地元に帰っていたし…私は離婚したし…」と言葉を選んで話しているようだった。

舞さんが「どうぞ…」とテーブルにコースターを敷き、ドリンクをその上に置いた。その後にお店の名刺を私のグラスの側に置いた。

「小さなお店ですけど…嫌じゃなければ…また遊びに来てください…」
と笑顔で話していた。

私はカウンターに置かれた名刺を見つめ、『嫌じゃなければ…』という言葉に引っかかっていた。智恵さんが電車の中で発した言葉でもあった。