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智恵の輪
第2章 阿吽(あうん)の呼吸
智恵さんの手が私の太ももに触れた。続いて別の手が私の肩に触れた。それは体の芯に近付きたい、芯まで温まるほど、たくさん話したいという女性からの呼びかけだった。ワンピースの裾がスリットになっていて、彼女の脚が見え隠れしていた。

私は彼女の勇気ある誘惑に応え、椅子から立ち上がり、彼女も椅子からゆっくりと立ち上がった。

智恵さんが再び私を黙って見つめ、私はそっと彼女の唇にキスをした。

バーは営業を終え静寂に包まれていた。緊張にも似た2人の見えない壁が消えようとしていた。もう誰にも心を乱されることがなかった。解放された気持ちが喜びに変わり、2人の距離がじりじりと縮まっていく。
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