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智恵の輪
第1章 誘い
そう微笑んで見せ、安心させようとした。そして落ち着きを取り戻せない彼女を見て、私はこう加えた。

「智恵さんは倉庫の事を考えて手配してくれていたのが分かるし…本当は言いたくない時もありましたよね…」

彼女は私を見つめ、「うん…本当はね…」と微笑みを浮かべていた。その時も彼女は指先で鎖骨に触れていた。

すると彼女は「次のお店行こう…?行きたいお店がある…」と誘ってきた。

**

2人はレストランを出た。彼女の「行きたいお店がある…」という言葉に誘われ、地下鉄に乗った。

金曜日の夜、車内は混みあっていて、適度な距離を保って立つのが難しかった。実際2人は他の乗客に押される形で、車両の真ん中付近まで移動しなければならないほどだった。乗客の何人かは顔を赤く染め、ほろ酔い気分で帰路に就こうとしていた。
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