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騎士団長は恋に溺れてはいけない──それでも君を抱きしめた夜
第1章 この想いは、ただの憧れ
ふと、頭の中にある考えが過った。

──このくらいの年代の女は、年上の男に憧れを抱くものだ。

騎士団長なんて肩書きは、特にそうだろう。

厳しくて頼れて、無口で少し怖くて──

そういう“大人の男”像を重ねて、勝手に心をときめかせる。

つまりセラの言動も、きっとその一種だ。

(……俺が団長だから、だ)

そう言い聞かせれば、気持ちは少し楽になる。

だが同時に、胸の奥がきゅっと締めつけられた。

どうしてだろう。

ただの憧れのはずなのに。

彼女の笑顔を、他の誰かに向けられると──想像するだけで、妙に息苦しい。

馬鹿げている。
何を考えている。
俺は団長で、彼女は部下。弟子だ。

──それだけのはずなのに。

知らず、胸の奥が少し熱を帯びていくのを、俺はまだ見ぬふりをしていた。
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