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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第17章 背徳のドライブ
その言葉を聞いて、裕樹の頭の中に一枚の画が浮かぶ。

高校時代の美術室。

イーゼルの向こうの葵が、ゆっくりとナツの裸身に塗り替わり、裕樹がカメラを構えてシャッターを切る姿。

「それは、下心とかそういうのナシでってこと…?」

ナツは目を伏せて首をゆっくりと縦に振る。

「……多分、若い時の身体を形にして残しておきたいって人がいるんじゃないかな。」

「当時は私もなんか怖いなと思って。断っちゃったけど、今思えば撮っておいても良かったな、なんて思う。」

そう言ってナツはゆっくりと裕樹から視線を外すと、後部座席に手を伸ばした。

無機質な光沢のデジタルカメラを取り出すと、両手で持ち直して、ナツは

「裕樹の今の姿、撮ってみない?」

と、ピントを合わせるように裕樹の身体へ向ける。

そこに下心や冗談の気配はなく、触れていた時とは異なる熱が瞳に宿っていた。

ナツの言う、若き日の身体のポートフォリオ。

そんなことは、考えたこともなかった。

撮ったものを自分の欲望として消費したい。

撮影する行為そのものに心を焼かれ、興奮しているだけだった。

ナツがかつて恐怖したように、若さを形に残すという感覚は、裕樹の中にはなかった。

それでも、カメラを向けた時の刹那的な背徳感は特別で──

「顔を映さなくても、良いなら……。」

裕樹は断る理由を、見つけることができなかった。

「あら……もったいない。」
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