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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第9章 可惜夜に焦がれ墜つ【急】
長すぎた密着の中で、肌と体温が混ざり合い、ゆっくりと一つになっていった。

雷雨で気温が下がった夜にもかかわらず、二人の身体は汗でじっとりと濡れていた。

葵の肌や髪が、裕樹の身体に張り付き、肌と肌の隙間を熱が駆けていく。

(ずっとこうしていたいけど、暑い…)

そう思いながら、裕樹はゆっくりと身体を起こした。

触れ合った肌は、薄いフィルムを剥がすかのように、貼り付いていた葵の肌と髪がゆっくりと離れていく。

外の雷に照らされた葵の肌が、艶めいて反射している。

濡れた髪が首筋に貼り付いて、デコルテが呼吸に合わせてゆっくりと揺れる。

その瞳は半ば閉じられていて、夢から醒めかけた瞬間のような、儚い顔をしていた。

その一つ一つが、コマ撮りのように裕樹の脳裏に焼きついていく。

葵の胸を見る、触れる、好き放題にする───

そんな欲望の原点から、大きく逸脱したこの状況下で、蕩けて崩れそうな葵の乳肉に手を伸ばす。

両手の指先で、僅かに広がっている乳肉を集めるように触り、汗に濡れた突起を舌先で味わう。

「やんっ、…はぁっ…」

柔らかい肉の感触と、葵の甘い声が裕樹の感覚を更に焼き尽くす。

視覚、嗅覚、触覚、聴覚、味覚の全てが、葵の性フェロモンを栄養素のように摂取していた。

どれかが欠けていても絶頂を迎えることはできるが、全てが満たされてしまったら、″絶頂しか″ありえない。

それは紛れもなく、全ての快楽を食べ尽くした証。

表面張力のように張り詰めた白濁液が、今にも先端から溢れそうになっている。

何もせずとも、決壊することは明らかだった。

それならば、葵の最も深い奥で──裕樹の本能は、片道切符を受け取り、進み始める。

動いたら終わる───でも、終わらせるのであれば、もう一切止まることはできない。

身体の我慢が崩れかける。

ほんの少し、ほんの数秒だけでも、葵と繋がっていたい────

肌と肌が濡れた音を立てて重なり合う。

裕樹の不器用な腰が、打ちつけるたびに葵の身体を震わせる。

「あ゛っ ! あんっ、あ、あっ……、ぐぅっ…」

舌足らずな葵の嬌声は、我慢する裕樹を逆撫でするように小屋に響いた。
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