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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第2章 続いた夜
階段を降りる足音が、自分のものとは思えないほど遠くに響いた。
パジャマの裾が脚にまとわりつき、ぎこちない歩みになる。
それでもこよみは、一歩ずつ台所へ向かった。

「おはよう」

かすれた声は、思うように出なかった。
それでも母はふと振り返り、包丁を持つ手を止めて、ふわりと笑った。

「おはよう、こよみ。ちょっと寝坊さんだったね」

責めるような調子ではなかった。ただの事実。
それだけなのに、その言葉が胸の奥を鋭く刺した。まるで、罪を問われたかのように。

こよみは返事をせず、小さくうなずくだけだった。
喉元まで言葉が込み上げていた。
「今日、学校を休みたい」と。
「なんでもないけど、お腹が痛い」と。
「……お父様が、昨日……」

けれど、そのどれもが言葉になる前に、するりと溶けて消えた。
言ったところで、何になる? 母は――知らない。知らないはずなのだ。
もし知っていたのなら、もし気づいていたのなら。
もっとずっと前に、何かが変わっていたはずだから。

「あ、ごはんはもうできてるから、お箸とお茶碗だけお願いできる?」

母の声が現実に引き戻す。
こよみは「うん」とだけ答え、滑らかな動作で配膳を始めた。

湯気を立てる味噌汁。香ばしく焼かれた鮭。小鉢に盛られたひじきの煮物。
どれも昨日と同じ、「日常」の顔をしている。

――なのに、すべてが遠く感じられた。

食器を持つ手に、力が入らない。
茶碗の位置が、ほんの少しずれた。
それでもこよみは、一つひとつ確かめるように、静かに、丁寧に、居間へと食事を運んでいった。
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