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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第3章 半透明の優等生
チャイムが鳴ると同時に、教室はぱっと賑やかになった。
休み時間。椅子を引く音、誰かが廊下へ走っていく足音、笑い声。

こよみは、机の上に開いた国語の教科書にそっと指を置いて、ぼんやりと眺めていた。

「なぁなぁ、これさー、まじでリカちゃんの髪より長くね?」

いきなり背後から声がして、こよみはびくりと肩をすくめた。

山下拓真が、自分の長い黒髪を指先でつまんでいる。その隣では、岡田春人が興味津々といった顔で覗き込んでいた。

「うわ、つやっつや! すげーな。どんだけ伸ばしてんの?」

岡田が小さく笑いながら触れようとするのを、こよみは素早く身を引いて避けた。言葉は出なかった。
けれど、ふたりの視線と指先が自分に触れる感覚に、全身が緊張していた。

「あっ……ごめ、ちょっと触っただけ……」

岡田の声が、どこか戸惑ったようにか細くなる。

こよみは、顔を伏せたまま自分の髪を両手で包み込んだ。
──だめ。だめだ。理由なんてうまく言えない。でも、さわらないで。
そんな言葉が胸の奥で渦を巻く。

やがて、チャイムが鳴った。教室がしん……と静まる。

「はーい、それじゃあ国語の時間ですよー」

松山先生が、手元の教材を持って教卓の前に立った。

「今日から、“親への感謝”をテーマにした作文を書いていきます。今日はその準備として、おうちの人のことを思い出して書いてもらいますね」

そう言って、配られたプリントは2枚。
「お父さんのこと」「お母さんのこと」と、それぞれの欄に分かれていた。

・名前
・年齢
・仕事
・好きな食べ物
・あなたのことをどう思っているか
・尊敬しているところ

こよみは、プリントを受け取って俯いた。
教室のあちこちで鉛筆の音が響き始める中、自分の手だけが止まっている。

「書けなかったぶんは宿題でいいですよー! おうちの人に聞いても大丈夫だからね!」

松山先生の明るい声が、教室にふわっと広がる。
こよみは何も書かれていないプリントを、そっとクリアファイルに挟んだ。
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