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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第3章 半透明の優等生

夕食と入浴を済ませ、あとは宿題を終わらせて寝るだけになった。
机の上には、空欄が目立つ二枚のプリントが広がっている。
国語の授業で配られた「親への感謝」の作文用下書きだった。
母が部屋の戸をそっと開けて、「そろそろ寝なさいね」と言って顔を覗かせた。
こよみは「はい」とだけ答えて、プリントに目を戻す。
母の足音が遠ざかっていく。扉の向こうの廊下が静かになった。
こよみはまだ、なにも書けずにいた。
「お父さんは、あなたのことをどう思っていますか?」
その問いの前で、鉛筆が止まってしまう。
わたしのことをどう思っているか、わからない。
少し前までは、まっすぐに愛してくれていた。
お店で働く姿が誇らしくて、私の自慢のお父様だった。
やさしくて、力持ちで、なんでも知っている人。
――でも今は、怖い。
お父様、どうして夜になると、私の部屋に来るの?
どうして痛いことをするの?
そして、それはどうして、朝になると魔法がかかったみたいに消えてしまうの?
まるで、ぜんぶ嘘だったかのように。
カリ、と紙の上で鉛筆が震える音だけがした。
こよみは息を吸って、ためらいがちにプリントを閉じた。
空欄の目立つ紙を、ゆっくりとランドセルにしまう。
明かりを落とし、布団に入る。
ぬるい空気と、まぶたの裏に残る蛍光灯の残像。
こよみは身体を丸めて、冷えた指先を脚の間に挟んだ。
机の上には、空欄が目立つ二枚のプリントが広がっている。
国語の授業で配られた「親への感謝」の作文用下書きだった。
母が部屋の戸をそっと開けて、「そろそろ寝なさいね」と言って顔を覗かせた。
こよみは「はい」とだけ答えて、プリントに目を戻す。
母の足音が遠ざかっていく。扉の向こうの廊下が静かになった。
こよみはまだ、なにも書けずにいた。
「お父さんは、あなたのことをどう思っていますか?」
その問いの前で、鉛筆が止まってしまう。
わたしのことをどう思っているか、わからない。
少し前までは、まっすぐに愛してくれていた。
お店で働く姿が誇らしくて、私の自慢のお父様だった。
やさしくて、力持ちで、なんでも知っている人。
――でも今は、怖い。
お父様、どうして夜になると、私の部屋に来るの?
どうして痛いことをするの?
そして、それはどうして、朝になると魔法がかかったみたいに消えてしまうの?
まるで、ぜんぶ嘘だったかのように。
カリ、と紙の上で鉛筆が震える音だけがした。
こよみは息を吸って、ためらいがちにプリントを閉じた。
空欄の目立つ紙を、ゆっくりとランドセルにしまう。
明かりを落とし、布団に入る。
ぬるい空気と、まぶたの裏に残る蛍光灯の残像。
こよみは身体を丸めて、冷えた指先を脚の間に挟んだ。

