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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第3章 半透明の優等生
部屋のドアが、そっと開いた。
ぎい、という小さな軋み音に、こよみは目を閉じたまま身をこわばらせる。

ああ、今夜もまた――。
胸の奥に、冷たいものがぽとりと落ちる音がした。
淡く光る希望の火は、指先ほどの大きさでしんと消えたのである。

足音は敷かれた絨毯に吸われ、音もなく近づいてくる。
寝息を装っていても、気配はごまかせない。
こよみは知っている。

今日も、来たのだ。

ベッドの横まで来た孝幸は、何も言わずに布団に入ってくる。
こよみは目を閉じたまま、息を殺すようにしてその気配をやり過ごそうとした。

けれど、今夜は何も起きない。
しばらくして、こよみは違和感を覚えて目を開けると、孝幸の顔がすぐそこにあった――。

「……うん、起きているな」
確かめるような声。低く落ち着いたその響きが、こよみの鼓膜をくすぐる。

孝幸は右手でこよみの小さな頭を包み込むように抱え、左手でそっと顎を上げさせた。
そして、何の前触れもなく唇を重ねてくる。強く、深く。

柔らかな感触に、こよみの喉の奥から声が漏れた。
唇が擦れ合い、孝幸の舌がゆっくりと唇の隙間を割って侵入する。
半ば開いたままのこよみの口内を、遠慮のない舌が執拗に弄ぶ。

舌が絡み、唾液が混じり、吸われる。
濃密な熱に、こよみの身体がびくんと震えた。

そのキスは、ひたすらに長く、激しかった。
こよみは、息をすることすら忘れていた。

ようやく唇が離れたとき、こよみは酸素の不足と、大人のキスにまだ慣れない身体の戸惑いに、涙を浮かべてぐったりとしていた。
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